拡散板
監視カメラや顔認証等のセキュリティ用途、車やドローンの自動運転用途、近赤外線を用いた3Dセンシング用途で高性能な光拡散板が使用されています。
製品概要
NSG独自の光拡散板は、紫外から近赤外にわたる広い波長域で、光の拡散を制御します。ガラス基板上に成形されたマイクロレンズアレイの微細構造を制御することで、円形、矩形、ラインなどのさまざまなパターン、さまざまな拡散角度を持つ光拡散板を提供することができます。
また、光拡散板とレンズを組合せることで、最大180度の超広角光拡散ユニットとしても使用できます。マイクロレンズによる光の屈折を利用した拡散板ですので、高い透過率と安定した光拡散性能を実現します。
精密インプリント技術、有機無機ハイブリッド材料(高耐熱性材料)、光学設計技術により、お客様の要望に合わせた光拡散板を、カスタム設計し、製造します
マイクロレンズタイプの高性能光拡散板
ガラス基板表面に、無数のマイクレンズを形成した光拡散板です。屈折作用により光を拡散させるため高い透過率を示します。それぞれのマイクロレンズの形状を制御することで、さまざまな拡散パターンが実現できます。また、マイクロレンズの配置を最適化することで、不要な干渉縞や輝点の発生を抑制します。
監視カメラ用の光源やToF(Time of Flight)カメラ用の光源の配光制御に好適です。
レンズ材料として、有機-無機ハイブリッド材料を使用
ガラス基板上へのレンズ成形材料は、NSG独自の有機-無機ハイブリッド材料を使用しています。可視~近赤外の広いの波長域で高い透過率を持ち、かつ、ガラスとの高い密着性を持っています。レンズ成形材料の耐熱温度は300℃以上で、一般的な半田(はんだ)リフロープロセスに通すことができます。
インプリント技術のメリット
インプリント技術(型押し)により作製するため、形状安定性に優れており、型をつなぎ合わせることで大面積化することも可能です。逆に、光拡散板のサイズが小さいときは、大型基板に一括成形した後に、切断してチップ化することもできます。インプリントは量産性に優れた技術だと考えられています。
その他、AR(反射防止)コーティングや外周部のメタライズ処理も可能です。詳細はお問い合せください。
光拡散特性の例
用途により、必要とされる照射形状、拡散角、強度分布が異なります。(例えば、ToFカメラ用の光拡散板の場合、一般的に、撮影する領域は矩形で、カメラの画角と照明の画角を合わせる必要があります。さらに、レンズも含めてセンサ部は入射角度に応じて感度が変化するため、それを補償するように照明側の強度分布を調整する必要があります。)
マイクロレンズタイプの光拡散板は、レンズ面形状とレンズ配置を調整することで、さまざまな拡散特性を実現できます。
ToF(Time of Flight)カメラ用照明装置
ToF(Time of Flight)カメラは、装置から出た光が対象物に当たって、装置に戻るまでの時間から、対象物までの距離を測定するカメラです。ここで使われる照明装置には、測定範囲(カメラの画角内)を均一に、できるだけ明るく照明することが求められます。光源(通常はレーザが使用されます)の放射角は、数度〜20度程度のため、そのままではカメラの画角のすべてをカバーすることができません。レーザ光を光拡散板に通して、所定の放射角度になるまで広げることで、カメラの画角内すべてで距離の測定が可能になり、検出精度が向上します。
超広角照明ユニット
光拡散板とメニスカスレンズを一体化して、拡散角度180度以上の超広角照明ユニットを構成することができます。監視カメラや自動車の搭乗者モニタリングなど、広い範囲を照明する必要がある場合に有効です。
用語一覧
拡散板(光拡散板)
光を散乱させる光学素子です。たとえば、レーザやLEDなど指向性の高い光も拡散板を通すことで、広がった光にすることができます。LEDライトやディスプレイのバックライト、センサーなどで、広く使われています。
拡散角度
拡散板に垂直な方向に放射される光の強度の1/2または1/eの光強度になる角度の2倍を拡散角度といいます。拡散板によって光がどれくらい広げられるかを数値で表しています。入射する光が平行光でない場合(例えば、LEDのように広がりを持つ光の場合)も、拡散板の角度は変わりませんが、拡散角度付近の光強度の傾きが変わります。
配光曲線
光が放射される方向とその強度を表す曲線を配光曲線といいます。横軸を放射角度、縦軸を光強度で表す場合や、光源を中心としてそこから放射される光の方向と強度をベクトルで表す場合があります。放射角度に寄らず光強度が一定になるものをフラットトップ特性、放射角度が大きくなるほど光強度が増えるものをバットウィング特性といいます。
照度
単位面積あたりに入射する光束量を照度といいます。単位はルクス(lx)です。
輝度
面光源を見たときに、単位面積、単位立体角から放射される光束量を輝度といいます。たとえば、ランバーシアンといわれる理想的な拡散面では、観察する角度によらず輝度が一定になります。
光度
単位立体角内に放射される光束量を光度といいます。単位はカンデラ(cd)です。
放射強度
単位立体角内に放射されるエネルギーのことです。単位はワット/ステラジアン(W/Sr)。
ToFカメラ
ToF(Time of Fleight;光が物体に当たって戻ってくるまでの時間から、その物体までの距離を計測する)の原理により、距離画像を撮影できるカメラ。自動車内外の計測、人流計測など、さまざまなシーンで利用されます。
VCSEL(面発光レーザ)
垂直共振器型面発光レーザー(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)は、半導体レーザーの一種で、基板面から垂直に光が放射される特徴を持ちます。光通信、レーザープリンタなどで幅広く使用されています。近年では、スマートホンの顔認証用の光源や、ToFカメラ用の光源として多く使用されています。
マイクロレンズ
大きさが数µm(ミクロン)~数百µmのレンズをマイクロレンズと呼びます。樹脂やガラスを金型で成形して作製されます。光ファイバと光学素子の光結合や、光拡散板として使用されています。
メニスカスレンズ
レンズの片面が凸レンズ、もう一方の面が凹レンズとなっているレンズです。それぞれの面の曲率の違いにより全体として凸レンズとして振舞うものと、凹レンズとして振舞うものがあります。凹メニスカスレンズを使用すると、拡散板で広がった光を均一に、さらに大きく広げることができます。
指向性
光強度が方向によって異なる性質を指向性といいます。例えばレーザポインタは、指向性がよく、ほとんど光が広がることなく進みます。指向性のない、または指向性の低い光源としては、白熱電球や蛍光灯が挙げられます。用途によって、指向性が必要なものや指向性がない方がよいものを使い分けています。
よくあるご質問一覧
耐熱温度はどれくらいですか?
通常のリフロー条件で使用できます。最大330℃(3分、窒素雰囲気中)のリフローでも使用可能です。
最大拡散角は何度ですか?
光拡散板単体での最大角拡散角は120度、レンズと複合化した場合は180度以上まで光を広げることができます。
標準品の仕様を教えてください。
ウェブサイトにいくつか例を記載していますので、そちらをご参照ください。
サンプル提供は可能ですか?
可能です。標準品以外でも在庫があれば、ご提供可能ですので、お問い合わせください。
お問い合わせはこちら配光分布の調整は可能ですか?
ほぼ任意の配光分布に対して設計が可能です。パターンの外形も、円形、長方形、楕円など、さまざまな形状に調整可能です。
オール無機拡散板は作製できますか?
可能です。オール無機拡散板は、ゾルゲル技術によって作製され、とくに耐熱性が要求される用途や、高い紫外線透過率が求められる用途に適しています。
カスタム品の設計、試作には、どれくらいの時間がかかりますか?
設計も含めて、1.5〜2か月がリードタイムになります。
試作費用はどれくらいかかりますか?
仕様により異なりますので、お問い合わせください。
お問い合わせはこちら使用する際の注意事項はありますか?
拡散板表面は、マイクロメータサイズの微細なレンズで構成されていますので、表面を強い力で引っ掻いたりしないでください。
マイクロレンズ表面での屈折作用により光を広げていますので、表面に液体など屈折率が異なる物質が付着すると拡散特性が変化します。ご使用になる場合は、表面に水や接着剤などを付着させないようにしてください。
拡散板には、表面(マイクロレンズが形成されている面)と裏面(平坦面)があります。ご使用になる場合は、必ず拡散面が光源側に向くようにしてください。(裏面を光源側に向けても光は拡散しますが、拡散強度分布が設計通りになりません。とくに拡散角度が大きい拡散板では、その差が大きくなりますのでご注意ください。)
光を斜めから入射させるとどうなりますか?
拡散板は、基板に垂直に入射する光に対して設計されています。光を斜めから入射させると、配光分布や、拡散パターン外形が非対称になります。例えば、矩形の拡散パターンで拡散する拡散板に、斜め方向から光を入射させると、台形の拡散パターンになります。
拡散板の厚みはどれくらいですか?
通常は、0.5mmt程度の厚みですが、0.2mmt〜1mmt程度までの厚みにも変更可能です。